移住者情報Migrant information
さぬき広島の北部に位置する茂浦地区。瓦屋根の家が集まる集落のちょうど道の角に、ゲストハウス「ひるねこ」はあります。昭和初期の建物で、庭には気持ちよさそうな縁側付き。門柱には猫のイラストが描かれた手作りの表札がかかっていました。
平井明さんは広島生まれ。高校からは島を離れていましたが、2008年に定年退職を迎えて島に戻ってきました。
平井さんは、さぬき広島・手島・小手島の住民の豊かな暮らしのために設立されたNPO法人石の里広島の会長を務めています。これまでデイサービスセンターや手島自然教育センターの管理運営、介護予防事業、コミュニティバスの運行などの様々な事業を通して、地域づくりに携わってきました。
「このままさぬき広島をほっとけん」
一軒家のゲストハウス「ひるねこ」は、平井さん率いる「島プロジェクト」メンバーが運営しています。
宿になる前は30年以上空き家が続き、庭はジャングルのようになっていたそう。
そこで平井さんたちは、茂浦地区の一番よい場所にあったこの家を「手入れして灯りくらい点けておこう。」という気持ちでいました。
そんな時、瀬戸内の猫の取材でさぬき広島に訪れた旅作家の小林希さんと出会います。
瀬戸内の島々の風景に魅了された小林さん。同時に島の課題にも自分ごとのように心を痛めたそう。最初の訪問からひと月も空けずに再び島を訪れ、こう提案したのです。
「美しい日本家屋を残したい。自分たちで再生して泊まれるようにしてはどうか。」
そこから平井さんたちの島プロジェクトはスタートします。
部屋の掃除、片付け、電気を通し、トイレも新しくして、眠っていた家に息を吹き込んでいきました。
電化製品を提供してくれたり、工事に協力してくれたり、消防設備のアドバイスをしてくれたり、島の皆さんの応援にも助けられました。
そうして2016年に「ひるねこ」はオープンしたのです。
ここでは子どもたちは思い切り自然とふれあうことができます。
庭の畑の野菜を収穫して自給自足体験もできます。
日本だけではなく、ハワイやフィジー、フランスから訪れたお客様も。身振り手振りでコミュニケーションを取りながら、夜は一緒に瀬戸内の魚料理をいただき交流を深めています。
2017年にはもう一つの宿 島暮らし体験住宅「旅ねこ」もオープン。こちらは20人まで泊まれます。
毎日の楽しみは趣味の釣り
島に戻られてよかったことはと尋ねると「毎晩釣りをすることが楽しみやな。」と嬉しそうに語る平井さん。雨が降っても行くというほどの釣り好き。
釣った魚は干物にしたり、ままかり(焼いて酢漬けにする郷土料理)を作ったりしているそう。
「子どもの頃におばあちゃんが作ってくれた地元料理が忘れ去られてしまうんやないか。」と心配もしています。今、さぬき広島に住むお年寄りに聞き取りをして、島の味を引き継いでいきたいとも考えています。
ゲストハウス「ひるねこ」の受付にはこう記されています。
「ここには何もないところですが
“猫が昼寝をしているが如く”
のんびりと過ごしていただければ幸いに存じます。」
島に魅了された人も、時々戻ってくる島出身の人も、
いつでも帰って来られる場所「ひるねこ」で平井さんは待っています。